最近よく耳にするようになったビットコインという言葉。
皆さんはその本当の意味をご存知でしょうか?よく耳にするし、なんとなく意味はわかっているけど、はっきりとは答えられない、そういう人の方が多いのではないでしょうか?
今回は日本だけではなく、フィリピンでも人気のビットコインについて解説していきたいと思います。
全部で5回に分けて紹介していきます。ビットコインの基礎的な部分から説明するので、なにもわからないという人でもわかりやすい内容になっているので、どうぞ最後までご覧いただけたらと思います。
目次
1.ビットコインって何がすごいの?
最近はよく「ビットコイン」について耳にすることが多くなってきました。マスメディアでも盛んに取り上げられるようになり、レートが上がる一方のビットコインの将来性をめぐり、識者や評論家がさまざまな見解を寄せています。
でも「ビットコインって結局のところ、なんなの?」と聞かれると、返答に困りませんか?
ぼんやりとわかっているもののその実態がつかみにくいのが、ビットコインです。そこで、今回から数回に分けてビットコインについて掘り下げてみることにします。基本的なことからじっくり紹介するので、ビットコインについてまったく知識がなくても大丈夫です。
実はフィリピンでは今、ビットコインがもの凄い勢いで広がっています。日本では投資の面ばかりが強調されるビットコインですが、フィリピンにおいては送金手段の一つとして大いに脚光を浴びています。
フィリピンなどの新興国の方が、ビットコインは流通しやすい性格をもっています。日本よりもはるかに早いスピードでフィリピンは、ビットコイン大国への道を歩み始めています。これについてはシリーズのなかで詳しく紹介します。
ビットコインはフィリピンの実体経済にもじわじわと影響を及ぼしつつあります。そうした事実を一切無視して、ビットコインを投資対象としての面だけで推し量ろうとしては大勢を見誤ります。
結論から言いましょう。ビットコインは世界を変えました。ビットコインが誕生する前とあとでは、私たちの社会の成り立ちそのものが大きく変わろうとしています。そしてその変化の波は、今も止むことなく進行中です。
ビットコインは世界のなにを変えたのでしょうか? 私たちの住む世界は、ビットコインによってどう変わろうとしているのでしょうか?その答えをひも解いていきましょう。
2.ビットコインってそもそもなに?
ビットコインとは、インターネット上に存在する仮想通貨のことです。「コイン」と名はついていますが、実際に「ビットコイン」という目に見える通貨は存在しません。だからこそ、あくまで仮想の通貨なのです。
ビットコインの実態はコインではなく、電子上の帳簿に過ぎません。ビットコインに限らず、仮想通貨はすべて電子上の帳簿と捉えた方が正解なのです。
でも、ビットコインが電子上のデータに過ぎないということは、私たちが家電量販店などで買い物をしたときにもらえるポイントや、駅で用いるSuicaやPASMOなどの電子マネーとなにも変わりないように見えます。
それなのに、どうしてビットコインだけが投資対象として騒がれたり、マスメディアによく取り上げられるのでしょうか?
ビットコインとポイントや電子マネーとの違いについて見ていきましょう。
2-1.ビットコインとポイント・電子マネーの違い
まずポイントとの違いは、通貨と交換できるかどうかにあります。楽天ポイントにしてもAmazonポイントにしても、商品を購入する際の手段にはなりますが、ギフト券は別としてお金を払って買うこともできなければ、手持ちのポイントをお金と交換することもできません。
しかし、ビットコインなどの仮想通貨は、円やドルなどの通貨と相互に交換することができます。お金を払ってビットコインを買うこともできれば、手持ちのビットコインをお金に換えることも自由にできます。そこがポイントとの違いです。
次に電子マネーとの違いですが、どちらも電子的な技術を用いた支払い手段として使われているため、案外その違いについて知られていないようです。
もしかして、ビットコインを新種の電子マネーだと思っていませんか?
運賃やコンビニエンスストアでの支払いや、インターネット上の決済などに電子マネーもビットコインも利用できます。しかし両者には、超えられない壁があります。
それは、電子マネーが一回限りの使用しかできないことに対して、ビットコインは企業や個人の間を転々と流通することです。
たとえば、コンビニエンスストアの支払いを電子マネーで済ませると、その時点で消費された電子マネーは使命を終えます。
しかし、ビットコインで支払った場合、店側はそのビットコインを使って他の店で買い物に使うこともできます。ネット上の支払いに使うこともできれば、誰かに送金することもできます。
つまり、ビットコインは通貨とまったく同じ働きをするのです。お金も企業と人の間を転々と流通します。ビットコインも同じです。だからこそ仮想「通貨」と呼ぶのです。
通貨としての機能をもつことにおいて、ビットコインという仮想通貨は電子マネーと大きく異なります。ビットコインの実態は電子上の帳簿ですが、その果たしている機能はまさに通貨そのものだからです。
通貨であるからにはレートが存在します。私たちが毎日使っている法定通貨である「円」にもレートがあります。同じようにビットコインにもレートがあり、今この瞬間にもその値は動いています。
ビットコインの価値が大きく変動するため、ビットコインは投資対象としても大人気を博しているのです。
3.ビットコインのすさまじい急騰ぶり
日本でビットコインが注目されている最も大きな理由は、価格の変動の幅が大きく、投資対象としてとても魅力的だからです。
一般に、投資は変動幅が大きければ大きいほど、多くの利益を得ることができます。投資対象としてビットコインがどれだけの利益をもたらしたのかについては、これまでにビットコインがどれだけ値上がりしたのかを見れば明らかです。
3-1.ビットコイン誕生
ビットコインがはじめて世に出たのは、世界的金融危機が起きた2008年のことでした。暗号システムについて議論するメーリングリストにナカモト・サトシという人物が論文を投稿して、ビットコインの構想を示したことが、そのはじまりです。
その構想は、これまでにはないまったく新しい電子通貨システムに基づいていたため、多くの研究者の興味を引くところとなりました。
そのため、ナカモト・サトシが作成したプログラムコードは、複数の研究者やコンピュータエンジニアたちの手によって次々と改良を加えられ、より磨き上げられていきました。
こうして多くの有志の手によって、ビットコインのプログラムはついに完成に至り、2009年から実際に運用が始まりました。
もっとも運用といっても、この段階ではあくまで実験的な取り組みに過ぎませんでした。実験に参加している誰一人として、ビットコインが現実にお金と交換できるとは考えてもいなかったのです。
ところが2010年5月に思いがけないことが起きました。
プログラマーのラスロー・ハニヤットが「ビットコイン1万枚あげるから、誰かピザと交換して!」と面白半分に投稿したところ、それに応じる人がほんとうに現れたのです。
イギリスの男性がピザ2枚との交換に応じたことで、ビットコインははじめて通貨としての役割を果たすことになりました。
これが、ビットコインの仮想通貨として産声を上げた歴史的な瞬間です。
それまでは、実験という限られた輪の中でゲームとして使うコインのような扱いを受けていたビットコインが、通貨の一つとしてこの世界に登場したのです。
誕生直後のビットコインのレートは、1ビットあたり0.2円程度でした。ですからピザ2枚が2,000円で取引されたことになります。
1ビットあたり0.2円から流通しだしたビットコインは、その後大きく値上がりしました。この記事を書いている2017年8月のレートは、1ビットあたり、およそ30万円です。
ということは、ビットコイン誕生時のレートから比べると、実に150万倍に膨れあがったことになります。驚異的な値上がり率です。
もし、ピザ2枚と1万ビットコインを交換したイギリスの男性が、未だにビットコインを持ち続けていたなら、彼はなんと30億円を手にできたことになります。ピザ2枚が30億円です。まさに世界一高価なピザと言えるでしょう。
しかし、残念ながらビットコインが少し値上がりした段階で、このイギリスの男性はすべてのビットコインを売却してしまったとのことです。人ごとながら、「惜しい!」と思わずにはいられません。
4.ビットコインで億万長者になった人・なり損ねた人
ビットコインが出始めた頃に購入した人のなかには、億万長者になり損ねた人もいれば、実際に億万長者になった人たちもいます。
4-1.Facebook開発者ウィンクルヴォス兄弟
Facebookの開発者として知られるウィンクルヴォス兄弟は、ビットコイン長者として世界的に有名です。ウィンクルヴォス兄弟はビットコインが必ず値上がりすると読み、まだ安かった頃に大量に購入しました。
彼らはすでに、確定した利益だけで11億円を手にしたとされています。
ウィンクルヴォス兄弟は、「ビットコインはフェイスブックより巨大になる」と断言しています。
4-2.ロジャー・バー
伝説のビットコイン・ジーザスとして名を馳せたのはロジャー・バーです。ロジャー・バーはビットコインが1ドル程度のときに多額の投資を行うことで、17億円以上の利益を得ることに成功しました。
ロジャー・バーは、ビットコインはまだまだ割安であると語っています。「ビットコインがより社会に受け入れられるようになれば、1ビットコイン=100万円、1,000万円ぐらいにはなるだろう」と、強気の姿勢を崩していません。
ウィンクルヴォス兄弟やロジャー・バーは、世界中のマスメディアがビットコインという存在にまったく気がついていたなかった頃から、ビットコインを投資対象として捉え、積極的に仕込みを行いました。
4-3.クリストファー・コッホ
その一方で、投資をするつもりなど一切なかったにもかかわらず、偶然大金を手にした人も多くいます。クリストファー・コッホも、その一人です。コッホは暗号化をテーマに卒論を書いている途中でビットコインのことを知り、遊び半分で5000ビットコインを購入しました。
その際支払った金額は27ドルです。
その後、コッホはビットコインを購入したことなどすっかり忘れていました。ところが4年後、ビットコインがすさまじい勢いで値上がりしていることが、テレビや雑誌で盛んに取り上げられるようになり、そういえば自分も以前にビットコインを購入していたことを思い出したのです。
コッホはビットコインを使うために必要なパスワードを死にものぐるいで探しました。すでに説明したように、ビットコインの実態はインターネット上に存在する帳簿です。
そのため、パスワードがわからないと帳簿にアクセスできなくなってしまうのです。
通常、パスワードを忘れてしまっても、そのサービスを管理する法人や団体に問い合わせればなんとかなります。
しかし、あとで詳しく紹介しますが、ビットコインには管理する主体自体が存在しません。
そのため、パスワードがわからなくなってしまうと救済措置が一切ありません。どれだけ多額のビットコインが眠っていようとも、パスワードが見つからない限り、もはや所有していることを主張できなくなります。
コッホは幸いにも無事にパスワードを見つけることができました。当時のレートでコッホは1億円を手に入れることができたのです。2,700円が4年後に1億円に大化けしたのですから、笑いが止まりません。
もっとも、コッホが5000ビットコインを売らずに現在も持ち続けていれば、150億円になっていました。今となっては、たった1億円で売り払ってしまったことが悔やまれるかもしれませんね。
こうしてビットコインは、数々の億万長者を誕生させました。その一方で、億万長者になり損ねた人も多々います。
その多くはビットコインを購入したものの、パスワードがわからなくなってしまった人たちです。当初はビットコインはゲームのように遊ばれていたに過ぎないため、多くの人はほったらかしにしていました。
たとえばなにかのゲームに夢中になり、ゲームで使うコインを2千円ほど購入しても、ゲームに飽きてやらなくなればパスワードの管理もおざなりになるものです。ビットコインも同じです。現実の通貨と交換できるなんて、ほとんどの人が思ってもいなかったのです。
ニュースでビットコインがとんでもない価格で現金と交換できると知り、あわててパスワードを探す人が続出しました。前述のコッホは、パスワードを見つけることができた幸運な一人です。
4-4.ジェームズ・ハウエルズ
コッホと対照的なのが、イギリスのウェールズに住むジェームズ・ハウエルズです。ビットコインが思いがけず高騰していることに驚いたジェームズは、パスワードを見つけるためにあわててパソコンのハードディスクをチェックしました。
しかし、パスワードはどこを探しても見つかりません。
やがてジェームズは、新しいハードディスクに交換する際に捨てた古いハードディスクのなかに、パスワードがしまってあることに気がつきました。
あわててジェームズは捨てたハードディスクを追跡したところ、広大なゴミ山のなかに埋もれていることがわかりました。そこで彼は埋め立て地にあるゴミ捨て場でブルドーザーを使って、今も必死にハードディスクを探しているとか……。
もしハードディスクが見つかれば、彼は7億円を手にできる計算になるそうです。必死に探す気もわかる気がしませんか?
5.投資対象としてのビットコイン
ビットコインの急騰は、短期間に多くの億万長者を生み出しました。そのため日本では、ビットコインといえば投資の面ばかりが強調されています。
たしかに投資対象としてビットコインは魅力的です。値上がり率が半端ではないため、もしかしたら自分も大金を手にできるかも、と夢を抱く人があとを絶ちません。
ビットコインは数百円から売買ができるため、お金に余裕がなくても手軽に投資を楽しむことができます。そんな手軽さも、ビットコイン投資の人気の一因です。数万円が必要になる株式投資と比べると、はじめやすいことは間違いありません。
また、FX(外国為替証拠金取引)のようにレバレッジという手法を用いて、投資額の何倍ものリターンを狙うこともできます。
ビットコインの価格は変動が大きいため、うまくいけば大きな利益を手にできます。ビットコインは1週間で5%程度動くこともあれば、週によっては10%以上変動します。その変動率はFXの10倍とも言われるほどです。
ただし、暴騰もあれば暴落もあることを忘れるべきではありません。ビットコインに代表される仮想通貨投資は十分に刺激的ですが、それゆえにハイリスク・ハイリターンという性格をもっています。
さらにビットコイン投資の特徴として、24時間365日、いつでもリアルタイムに取引できることがあげられます。週末でも夜間でも取引ができ、どの時間帯でも流動性が十分高く保たれています。ビットコインの取引量は、日本国内だけでも1日あたり100億円を超えているほどです。
このように投資対象として魅力を放っているビットコインですが、実は警鐘を鳴らす意見も数多く寄せられています。
5-1.ビットコインに対し世界的有名な人の見解は
世界的に有名な金融グループであるゴールドマン・サックスは、2014年3月に発表したビットコインに関する報告書のなかで、「ビットコインは通貨ではない。その信奉者は頭を冷やして出直すべきだ」と述べています。
報告書のなかでは、ビットコインの価格変動が激し過ぎるため、価値を保存する手段として適切でないことが批判されています。
投資の神様として知られるウォーレン・バフェットも、ビットコインに批判的な眼差しを向ける一人です。バフェットは「ビットコインは幻想だ。近づくな」と言い切っています。
ビットコインには価値の裏付けになるものがなにひとつ存在しないことを、バフェットはやり玉に挙げています。
ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラーも、ビットコインの急激な価格変動を問題にしています。シラーは2014年1月の世界経済フォーラム年次総会(別名ダボス会議)にて、ビットコインは典型的なバブルに過ぎないと論じています。
もっとも、ビットコインに対して懐疑的な見解が多数寄せられた、2014年当時のレートと現在のレートを比べてみると、ビットコインが順調に値上がりしていることがわかります。
2014年は1ビットコイン400ドルほどでしたが、現在は2,700ドルになっています。およそ6.5倍です。
したがって現時点から振り返れば、ゴールドマン・サックスやウォーレン・バフェットの忠告を無視して、ビットコインを買っていたほうが正解だったことになります。
しかし、今後もビットコインが値上がり続けるという保証はどこにもありません。多くの投資家や識者が指摘するように、ビットコインの急騰がバブルに過ぎない可能性も依然として高いことに変わりありません。
ある日突然、バブルがはじけるかもしれません。
5-2.過去に起きたチューリップバブル
バブルの寓話としてよく引き合いに出されるのは、1600年代にオランダで起こった「チューリップバブル」です。当時はチューリップの球根が投資対象となり、市場は過熱する一方でした。
珍しい品種の球根には大豪邸一軒分の値段がつくことも珍しくなく、たかがチューリップの球根ひとつに市民の30年分の年収にあたる高値がつけられました。
あとから振り返るなら明らかに異常な事態ですが、市場が過熱している最中にはそれをおかしいと思う人は少ないものです。球根を買えば確実に値上がりして儲かると信じた人々があとを絶たず、市場を支え続けました。
ところが1637年2月3日、前日まで賑わっていた球根市場から突然買い手が消えてしまいます。あまりにも球根が高騰したために資金が追いつかなくなり、誰一人として球根を買うことができなくなったのです。
そのとき、人々はチューリップの球根はきれいな花を咲かせはするものの、それ自体には資産的な裏付けがなにもないことにはじめて気がつきます。値上がりする根拠など、はじめからなにひとつなかったのです。
必ず値上がりするという幻想から覚めたとき、もう誰一人としてチューリップの球根を買おうとする人はいませんでした。
買い手がつかないままチューリップの球根は値下がり続け、その結果として多くの人々が破産したのです。それが、歴史に名高いチューリップバブルです。
ビットコインは明日にでも、オランダで起きた「チューリップバブル」を再現するかもしれないと危ぶまれています。
なぜならチューリップの球根がきれいな花を咲かせたように、ビットコインの目的はあくまで決済手段の一つに過ぎず、ビットコイン自体には資産的な裏付けなどなにもないからです。
ビットコインが現在値上がり続けているのは、買い支えている人たちが「価値がありそうだ」と信じているからに過ぎません。
ウォーレン・バフェットが指摘するように、「価値がありそうだ」という思い込みが幻想に過ぎないことがわかれば、ビットコインも一夜にして大暴落を起こす可能性があります。
FXで扱う法定通貨とは異なり、ビットコインには国家の後ろ盾がありません。そのため幻想が弾けてひとたび暴落が始まると、すさまじい勢いで下落すると考えられています。
売り抜けしたくても買い手がつかなければ、大暴落を黙って見ているより為す術がありません。
ビットコインは値動きが大きいため投資対象として魅力的ではあるものの、その反面いつ大暴落してもおかしくない不安要素を抱えています。つまり、ビットコインを資産の保有手段として用いるには、あまりにもリスクが大きすぎるということです。
これはビットコインなどの仮想通貨がもっている宿命であり、逃れようがありません。ビットコインはもともと投資対象として誕生したわけではありません。決済や送金手段の一つとして産声を上げたのです。
ですから、ビットコインの本来の趣旨からすれば、決済や送金が済んだ時点ですぐに現金と交換することが望ましいのです。
ビットコインを投資対象として扱うことには、大きなリスクが潜んでいます。
6.投資を超えるビットコインの価値
ここまで見てきたように、投資対象としてのビットコインは不安定要素が大きく、けしておすすめできる投資対象とは言えません。
しかし、そのことがビットコイン自体の価値をおとしめるものではないことに注意してください。
投資を通して何人もの億万長者を輩出したり、あるいはこの先大きな損失を被る人がいたとしても、それはビットコインの副次的な作用であって、本来のビットコインに課せられた使命とはなんの関係もないことです。
ビットコインのもつ本来の機能と投資対象として適しているかどうかは、まったく別の話です。
「投資対象としてのビットコインには危うさがあるからビットコインはダメだ」と断じるなら、それは大間違いです。
ビットコインの誕生は、単にひとつの仮想通貨が既存の通貨に新たに加わったことに留まりません。
ビットコインは今、私たちの住む世界を根底から覆そうとしています。ビットコインは通貨市場にかつてないほどの革命をもたらしましたが、さらにこれまでとはまったく様相が異なる新しい世界を開く礎になろうとしています。
まさに「革命」と呼んでも差し支えないほどの大きな変化を、ビットコインは社会にもたらそうとしています。
もっとも、ビットコインというひとつの仮想通貨自体が、世界に革命をもたらすわけではありません。ビットコインを成り立たせている中核となる技術である「ブロックチェーン」が、社会と経済を根底から変えつつあるのです。
いったい今、ビットコインの登場によって世界になにが起きているのでしょうか?
7.送金手数料がほぼ無料になる!
ビットコインが果たした役割のなかで特に大きいことは、ビットコインにより送金手数料がほぼ無料になったことです。
インターネットが広がるにつれて、通信費がほとんど無料になったことは世界を大きく変えました。
それと匹敵するほどの変化をビットコインがもたらそうとしています。ビットコインは送金手数料をタダ同然にしてしまいました。送金手数料が消えることで、世界は大いに豊かになろうとしています。
とはいえ日本に暮らしていると、送金手数料がほぼ無料になったといわれても、それがどのくらいすごいことなのかピンと来ないことでしょう。
なぜなら日本の銀行のオンラインシステムは、世界でもっとも進んでいるからです。日本ではわずかな手数料を払うことで、国内のどの銀行にも送金できます。送金処理も早く、わずか数時間で完了します。
日本にいると、それは当たり前のことであり、特段ありがたいと感じることもありません。しかし世界各国を見渡してみると、実は極めて優れた送金システムであることがわかります。
7-1.先進国アメリカがまさか?
たとえばアメリカでさえ、銀行間の送金はかなり面倒です。ニューヨークからロサンゼルスの銀行に送金するだけで、送金手数料が2,000〜3,000円もかかります。送金処理にかかる時間も日本とは比べものになりません。実際にロサンゼルスに着金するまでに、3〜5日ほど待たされます。
先進国を代表するアメリカでさえ、このような有り様なのですから、他の国についてはもっと劣悪な状況にあると思ってよいでしょう。
「送金手数料は高く、送金処理は時間がかかるもの」、それが世界の常識です。
このことが様々なビジネスの成長を阻んできました。送金手数料が高いため、ビジネスの現場ではある程度の金額がまとまるまで、送金を控えるのが普通です。
一度送金してしまえば着金するまでの数日間、海外送金の場合は数週間もの間、企業にとってそのお金は死んでるも同然です。その間に運転資金が足りなくなり、企業経営は危機を迎えるかもしれません。
※参考までにゆうちょ銀行からフィリピンの口座への送金は4〜6営業日が目安となっています。(参照元:ゆうちょ銀行ウェブサイト)
送金手数料の高さと送金処理の遅さは、企業経営にとっては死活問題なのです。
ところがビットコインが登場したことにより、状況は大きく改善されました。ビットコインを使って送金すれば、ほぼ無料で数分で完了するからです。このことが、様々なビジネスや日常生活に大きな影響をもたらすことは当然といえるでしょう。
ことに海外送金において、ビットコインはその力を発揮しています。ビットコインの取引はネットを使うだけで済むため、国内に送金しようが海外に送金しようが同じことです。
そのため、従来までの銀行システム、ウエスタンユニオンやマネーグラムなどの国際送金会社を介した海外送金と比べて、ビットコインは送金コストを劇的に引き下げることに成功しました。
現在の国際送金のコストはかなり高く、国際送金をよく行う個人や企業を悩ませています。ことに新興国では銀行支店網が整備されていないことが多いため、高い送金コストを払わなければいけませんでした。
では、なぜ国際送金が高いのかといえば、これまで海外送金は銀行が独占していたからです。ウエスタンユニオンなどの国際送金会社は、世界中に支店を設けることで一時的に送金額を立て替えているに過ぎません。
たとえば、ウエスタンユニオンの送金支店は世界に50万箇所もあります。
国際送金会社といえども現実に送金を行えば、数日から数週間の日数が必要になるのです。実際の海外送金業務を担っているのは、国際送金会社ではなく銀行だからです。
銀行は既得権益に守られ、送金コストを引き下げるための努力を怠ってきました。むしろ銀行は様々な手段を用いて手数料の底上げを図ってきたと指摘されています。
たとえばノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツは、「銀行はあらゆる手を使って手数料を引き上げてきた」と述べています。実際のところ、送金コストの内訳は透明化されていません。
また、銀行をはじめとする金融業界が情報技術の導入を拒んできたことも、送金コストが引き下げられない要因の一つです。
インターネットが登場したことにより、私たちの周りに情報技術が取り入れられ、私たちの暮らしは便利になりました。しかし、金融業では他の産業に比べて、情報技術の利用がかなり立ち遅れています。
インターネットを用いた最新の情報技術に背を向けるかのように、銀行では未だに旧式の中央サーバに情報が集められ、集中管理が行われています。中央サーバを守るためには、どうしてもセキュリティに莫大な費用がかかるのです。
その点、ビットコインでは中央サーバを必要としないため、ほとんど費用をかけずにセキュリティを守ることができます。中央サーバを介さずにビットコインがどうやって強固なセキュリティを築いているのかについては、のちほど詳しく紹介します。
よく考え抜かれたプログラムを使うことで、ビットコインは銀行の中央サーバ以上のセキュリティを、コストをかけずに築くことに成功しています。
この差はそのまま、海外送金のコストと送金処理の速さに反映されています。中央サーバの管理にかけた費用は、銀行の手数料に跳ね返ります。中央サーバをいちいち介するため、送金処理にも時間がかかってしまいます。
しかも海外送金では送金が完了するまでに複数の銀行を経由します。そのため送金手数料はさらに高くなり、送金処理はますます遅れるという悪循環に陥っています。
そのため現在、海外送金は急速に銀行や送金会社の手を離れ、ビットコインに移っています。従来に比べてタダ同然の安い手数料で、しかも10分程度で素早く送金できるビットコインが使われるのは、自然な流れといえるでしょう。
7-2.メリットその1、途上国が変わる
なかでもビットコインの恩恵をもっとも受けているのは、途上国です。途上国の送金コストは先進国と比べると、より高く設定されています。それでも送金できればまだいいほうで、そもそも銀行が存在しないため、送金自体ができない国や地域もあります。
こうした途上国でもネットにつなぐことさえできれば、ビットコインを使ってただ同然で世界中に送金できるようになります。ビットコインは途上国の経済を大きく変えようとしています。
実際、送金の問題さえなくなれば、先進国の企業が人件費の安い途上国や新興国の企業と連携してビジネスができるようになります。貧しかった途上国の経済が、ビットコインの登場によって豊かになる可能性が一気に開けたのです。
7-3.メリットその2、小規模ビジネスが成り立つ
送金コストがゼロに近くなることのもうひとつのメリットは、小規模のビジネスが成り立つようになることです。これまでは100円程度の商品をネットで単品で販売するビジネスはなかなか成立しませんでした。送金コストが高いからです。
世界的に見て送金コストが安い日本においても、銀行振り込みの手数料は一件あたり200円以上かかることが一般的です。これでは単価の安い商品やサービスを提供してもユーザーが二の足を踏むため、ビジネスが成立しません。
クレジットカードを使えば送金コストはかかりませんが、実際にはお店が手数料を払っています。手数料分はあらかじめ商品の価格に上乗せされているに過ぎません。送金コストが下がれば、商品価格も下がります。
ビットコインが普及すれば送金コストがほぼなくなるため、小規模のビジネスが成り立つようになります。これまでにない新しいビジネスが生まれることになるでしょう。
日本での電子商取引の市場規模は、2015年に15兆円を突破しました。年々伸びてはいるものの、家計が支出する消費額の総額は2015年で約285兆円ですから、全体のわずか5%程度に留まっています。
スマホの普及率が伸びている今、ネットを利用したビジネスはこれからまだまだ伸びていく余地があるのです。
では、なぜ現在あまり広がってないないのかと言えば、送金コストの問題があるからだと考えられています。実際に店舗に足を運びさえすれば送金コストがかからないため、より安く購入できるからです。
ところがビットコインであれば、この問題を一瞬にして解決できます。電子商取引の市場規模は、ビットコインによって一気に拡大するかもしれません。
ビットコインの登場によって送金手数料がほぼ無料化されたことで、これだけ大きな変化が生まれています。
ですが日本にいると、こうしたビットコインのすごさはなかなか実感できません。送金手数料がもともと低く豊かさに恵まれている日本では、ビットコインなどの仮想通貨はどうしても社会に溶け込みにくい傾向があります。
それが、日本が仮想通貨後進国である最大の理由です。
しかし、フィリピンではまったく事情が異なります。海外に出稼ぎに出ている人が多く海外送金の需要の高いフィリピンでは、ビットコインを使って海外送金を行う人が急速に増えています。
フィリピンは中国・インドに次いで、世界で三番目に国際送金の額が高い国です。日本にいては想像できないほどの勢いで今、フィリピンではビットコインが普及しはじめています。
ビットコインについておわかりいただけたでしょうか?
次回はフィリピンで起きている、ビットコインによる金融革命について紹介しましょう。
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ビットコインの仕組み -ブロックチェーン・マイナー・暗号鍵-
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