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日本語カンペキ!?外国人力士にみる言語習得のヒントとは?

更新日2023.12.07

日本語カンペキ!?外国人力士にみる言語習得のヒントとは?

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突然ですが、みなさんは大相撲はお好きでしょうか。

日本の伝統国技としてお年寄りから若い方にまで人気のある大相撲。毎年、1月から始まる本場所で力士たちが死闘を繰り広げる様子はテレビでも放映され、多くの人に親しまれています。

最近では、フィリピン人の母親を持つ高安関が大関に昇進したことで、フィリピンでも注目を集めました。

さて、そんな相撲の世界で活躍する力士たちの中には、外国出身の関取が多くいます。みなさんも外国人力士たちがテレビのインタビューに応じる様子をご覧になった事があるかもしれません。そして 彼らが流暢な日本語を話す様子をご覧になって驚かれた事があるでしょう

そんな彼らは日本語をどのように習得したのでしょうか。その秘密を探ることで、私たちが英語を学習する上でのヒントが得られるかもしれません。

今回は、そんな 外国人力士たちから語学習得のコツを探ってみましょう

日本語堪能な外国人力士たち

今では、外国出身の力士たちがたくさん大相撲に参加しています。近年では特にモンゴル勢の活躍がめざましく、白鵬関をはじめとして東西横綱4名のうち3名がモンゴル出身力士で占められているほどです。

遡れば、明治時代にはすでに外国人力士が相撲興行に参加していた記録があるというのですから驚きです。

1990年代にハワイ出身力士が外国人力士として大活躍し、その後外国出身の力士が激増するきっかけとなりました。

過去20年で外国人力士はその数を大幅に増やし、近年では幕内力士の3割以上を外国人力士が占めるまでになっています。

(http://zunny.jp/00001308ら引用)
(http://zunny.jp/00001308ら引用)

そんな外国人力士の出身地は、モンゴルなどのアジア圏やヨーロッパ諸国、そしてエジプトといった国々からあらゆる国籍の力士が集まっています。そして、その出身地に関わらず、彼らが一様にして流暢な日本語を話していることは驚きに値します。

特に モンゴル出身の力士たちの日本語は訛りもほとんど気にならず、日本人が話すのと遜色ないレベルです。

言語習得過程の管理

英語や日本語に限らず、言語を習得するのは一筋縄では行きません。みなさんもそれは実感していることでしょう。

では、言語習得の過程はどのように管理されているでしょうか。

一般的に 教師管理、学習者管理、管理者不在の三つの基本管理タイプが存在すると言われています。

外国語を学ぶ際、たいていの場合は教師による指導からスタートします。『教師管理』は、語学留学で学校に通うのもこれに当てはまります。具体的には教室での教師によるインストラクションや教材の説明などが挙げられます。

一方で、学習者自ら学習過程を管理することも多々あります。積極的に英語の動画を見たり、外国人のチャット仲間を探したりといった行動です。

それに加えて、管理者不在という場合があります。教師や学習者本人の働きかけがなく、自分で意識していない中で習得が行われる『自然習得』と呼ばれるものです。

これら三つの管理はどれが優れているということではありません。外国語の習得環境や本人の動機などによって、管理タイプが異なってきます。また、学習を進める過程で管理タイプが変わることもあります。

外国人力士の日本語習得プロセス管理

では、外国人力士たちはどのように日本語を身につけているのでしょうか。

力士は新弟子検査に合格すると、国技館にある相撲教習所で半年間、相撲の実技や教養を学びます。その間、特に外国出身の者に対して特別な配慮はありません。

相撲協会による積極的な語学習得支援の形跡が見られないことから、外国人力士たちは語学講師などによる『教師管理』による学習ではなく、主に本人の意識的な学習や日常生活を通して無意識に学ぶスタイルがメインになるようです。

アルゼンチン出身の元力士である星誕期は、過去のインタビューでこう語っています。

(日本語を教えてもらったのは、)最初の頃はやっぱりおかみさん、親方が多かったです。そのあと、その時関取におった人間から時間の読み方とか教えてもらったんですけど。あとは自分でテレビ見たりして覚えたんですよ。あと、しゃべれるようになってからは、よその関取衆、寺尾関とか、結構井筒部屋に稽古に行ったりとか教えてもらったり、巡業行った時に話したりとかありました。
出典:外国人力士の日本語習得:言語管理と自然習得(宮崎里司/早稲田大学)

もちろん、入門初期の頃は相撲部屋の親方や女将さん、先輩力士などにより日本語を教えてもらうかも知れません。しかし、 基本的には日々の生活や修業の中で習得する『管理者不在』の状態で日本語を身につけます

身の回りに溢れるオーセンティック教材

語学習得の上で教材は欠かせません。

一般的な語学教材といえば、文法構造の説明や練習のための問題などを取り入れて、学習者にわかりやすいように設計されています。また、教師用の「教科書ガイド」などもあり、教える側にも説明しやすい工夫がされています。

それに比べて、もともと教育目的で使用されることを想定していない生教材(オーセンティック教材)があります。 新聞やテレビなどがそれに当たります。もちろん、もともと教育目的のものではないので、学習上の便宜は図られていません。

しかし、この生教材(オーセンティック教材)は、より実践的な場面での使用に適していると言われ、さらにネイティブスピーカーとの相互コミュニケーションの場面で応用するのに適していると言われています。

そして、外国人力士の周りにはこの生教材が溢れているようです。

1.番付表
外国人にとって日本語学習のハードルを上げる要因となっているのが、「漢字」です。外国人力士も日本語の読み書きは苦手な人が多いようですが、 自分達と直接関係のある「番付表」に記載されている力士の名前は読めるそうです。

過去のインタビューでも、モンゴル出身の旭天鵬が「幕内、十両は全部読めます」と答えています。つまり、幕内、十両の約70名に及ぶ関取の漢字で書かれた名前が全て理解できるとのことです。

2.テレビ・ビデオ・映画
日本語に触れる生教材としては、テレビなどのメディアも大きな役割を果たします。基本的に相撲部屋で他の力士たちと共同生活を送る外国人力士は、学校に通っている留学生よりもこうしたメディアを鑑賞する時間が長いかもしれません。

テレビ番組では自然な会話をその場面の映像を見ながら聞くことができるので、 会話のスピードに対する慣れと内容の理解度を早めます

3.カラオケ
外国人力士へのインタビューで、意外にもカラオケが日本語習得に役立ったと答える力士が多くいます。

彼らは、後援会との付き合いなどでカラオケを歌う機会が多く、支援してくれている人たちのために必死で日本語の歌詞を覚えて歌うそうです。先ほどの旭天鵬や小錦(現KONISHIKI)なども親方に連れられてよく演歌を歌わされたと言います。

メロディーに乗せて日本語歌詞を暗記することで、単語や言い回しを覚えるという面があります。しかし、それと同時にカラオケを通して 日本人ネイティブスピーカーとのネットワークを構築するのに役立っているようです。

4.ファンレター・メール
ファンレターなど、自分に当てられたメッセージは文章を理解する上で非常に有効と言えます。特にファンレターは自分に対する励ましのメッセージなどの積極的な内容が多く、他の教材と比べて親近感が湧き、読んでみたいという強い動機が生まれます。

会話を実践する機会

外国人力士を取り巻く環境は、日本語を実際に話す機会に囲まれています。

相撲部屋の親方や他の力士をはじめ、ご近所や熱心なファンであるタニマチによる後援会との付き合いは大切です。また、幕内に昇進すれば、マスコミによる取材やファンとのやりとりが発生します。 基本的に通訳が付くことのない力士たちは、こうした状況に囲まれて日本語を話さざるを得ません

こうした、自分の周りを取り巻く日本人とのコミュニケーションの機会を力士たちは積極的に有効活用しています。日本語で相手と話し、新しい単語や表現を相手に尋ねたりして成長していきます。

強い動機付け

生き残りをかけた厳しいプロの世界に身を置いている力士たちは、古い日本の伝統様式を色濃く残した角界のしきたりを身につけなければなりません。そのため日本語を習得しなければ、力士として強くなることはおろか、角界で生きていくことができないのです。

中国、内モンゴル出身の蒼国来はこう言っています。

相撲界は厳しい。今日、教えられたことを覚えられなければ、この世界ではやっていけませんよ。私たちは(日本語を)ボールペンではなく、体で覚えていくのです。
出典:https://www.nippon.com/ja/features/c01604/

このように外国人力士たちは、勉強というよりはむしろ稽古と同じように日本語を実践から学び、体で覚えていると言えるでしょう。

まとめ:私たちが英語を学ぶヒント

こうしてみると、外国人力士は相撲部屋入門と同時に24時間日本語漬けの環境に放り込まれます。その中で、日々の稽古や相撲部屋での生活を通して日本語を身につけています。

では、私たちが英語を学ぶために彼らと同じように24時間英語漬けの環境に身を置くことができるかといえば、それは現実的ではありません。しかし、ここから英語学習のヒントを得ることができます。

私たちが英語を学ぶ場合、セブ島留学を始め語学学校などで学ぶのが一般的です。では、留学を終えた後はどうでしょうか。留学後、もしくは学校卒業後も英語を習得したいのであれば学習は続くのです。

そこでは、『教師管理』は存在しないため、 自分自身で学習の管理をする、もしくは日常生活を通して英語に触れていくことが必要です。

外国人力士たちは生教材(オーセンティック教材)に囲まれ、それを積極的に活用していました。私たちも一般的な教材に加えて、 自分の仕事と関係のある資料を英語で取り入れる、身近なニュースを英語で読む(もしくは視聴する)、スマホの設定言語を英語にするといった、日常生活で自ずと英語に接する機会を作ることができるでしょう。

また、実践の機会を多く持つ姿勢も見習うことができるでしょう。なぜなら、英語力は勉強量に比例して伸びるのではなく、 実際に英語を使用した量に比例して伸びるからです。

でも、日本にいながら外国人と接する機会を見つけることが難しいと感じるなら、Gaijin PotMeetupといったウェブサイトなどを通して、外国人が集まるイベントに参加してみるのもいいかもしれませんね。

もちろん、効率的に語学習得するにはプロの講師から教わるのが最適です。しかし、 それに加えて日常生活を通して語学を実践的に体得する環境を積極的に整えることで、さらなる飛躍が期待できるかもしれません。ぜひ試してみたいですね。

それではまた。

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