『ヘンリー・シー』といえば、巨大モールのSMのオーナーであり、中国や香港の大起業家ビジネスマン、大金持ちというイメージが先行します。
それもそのはず、彼はフィリピンで5年連続最も裕福な人物としてランクイン。(億万長者は誰だ!?フィリピン人大富豪トップ10ランキング20152)。この中国系フィリピン人起業家の成功物語に人々は興味深々なのです。
ヘンリー・シーとは
フィリピンで最も大きい小売業やショッピングモールを運営する企業『SMグループ』。シー氏はそのSMグループの創始者であり、SM Prime Holdingsの総裁です。(彼は1兆円以上の資産がある)
そのSMグループの1つ、SMモールは2012年の総賃貸可能面積をもとに発表された中で、世界で最も大きいモールと認められました。(3位にSM City North EDSA、10位にMall of Asia in Pasay)
今はただ文字通りお金が溢れるような生活を送る彼が、昔貧しい子供だった話、皆さん信じられますか?
恵まれなかった少年時代
今やフィリピン小売業界のキングとも言われるヘンリー・シー。幼いころの彼は、貧困から抜け出そうと努力する一人の少年でした。
ヘンリー・シーは、1932年12月25日、中国南部にある小さな村で貧しい家庭に生まれました。幼い頃から海外で運を試そうとするビジネスマンを夢見ていた彼は、父親の足跡を踏むことになります。
12歳になった彼が父親の後を追い、フィリピンで見たもの。それは、成功したはずの父親の悲惨な暮らしぶりでした。
この大変悲しい現実に涙を流した後、彼は今まで以上に自分の目標を達成できるように粘り強く頑張ります。少しでも生活を楽にするためには、どんな努力でも惜しみませんでした。
Divisoria flea marketで商品を仕入れ、それを背中に担いで運び父親の小さな店で売る日々。夜になって店を閉めると彼らは店の中の小さなスペースで眠りにつきました。昼夜を問わず働く彼らの重労働は、やがて実を結ぶことになりますがそれはまだ先のこと。
12歳の時にキアポにあるAnglo-Chinese Schoolで勉強を始めたヘンリー。しかし同時に英語との格闘も始まりました。
順風満帆だったはずのヘンリーと父親に不幸が訪れたのは、第二次世界大戦のことです。1946年には経済が崩壊したうえ、彼らの店は焼け落ち、これをきっかけに父親は中国へ帰ることを決意します。
しかしフィリピンに残ろうと心に決めたヘンリー。自身の商売を立ち上げ、Marikinaの安い靴を売ることにしたのです。
ヘンリー・シー誕生
1949年、ヘンリーは中国銀行より資金を調達することに成功し、それをビジネス再建に充てることにしました。
そして業界における販売や購入のスキルを高めるためにAssociate in Arts in Commercial Studiesの分野で学位取得を目指し、1950年Far Eastern Universityへの入学を決意します。そして名をヘンリー・シーに改め、フィリピン国籍を取得したのです。
しかしその2年後、彼はビジネスに専念するために学業を諦めることになります。その後、中国からの移民女性と結婚したヘンリー。彼女はFelicidadという名に改名し、フィリピン国籍を取得しました。
6人もの子宝にも恵まれたヘンリー一家。フィリピン人の強い影響から、その後、彼らは二人ともカトリック教徒に改宗することになります。
フィリピン経済が軌道に戻り始めた頃、ヘンリーは最初の商売に着手します。選んだ土地はマニラのカリエドストリート。Shoemartという名の靴屋を出すことに決めました。
その後人気店となったその店。さらに2つのアウトレットショップも出店されます。しかしそれで満足できなかった彼は、各店舗に家電関連製品を置くことにします。
さらに1960年代からは事業は大きく拡大しました。1970年代にはShoemartという靴屋からSMという名称に変え、全分野の商品が揃うデパートにまで成長。マカティ市では前例のない店舗となり、さらにそれに続くほか4店舗のうち1店舗はイロイロ市に置かれ、マニラ首都圏外の地域では初の出店となりました。
1985年11月25日、ケソン市にSM City North EDSAと呼ばれる初のスーパーモールが開店します。そして今日ではフィリピン全土に43店舗、さらに中国にも数々の支店が出店しているのです。
シー氏はこれらの功績により数々の賞を受賞しました。
例えば1999年のMakati Business Clubによるマネジメントマン・オブ・ザ・イヤー、同年1月にはDe La Salle University のビジネスマネジメントにおける名誉博士号取得、2008~2012年にはフィリピンの富豪40人、Forbes誌による慈善の英雄、そして初の中国系フィリピン人のPRA President Award受賞者(2005年)となったのです。
これは単なる運の問題なのでしょうか、それとも努力の賜物なのでしょうか。もしかしたらその両方かもしれませんね。
いずれにしてもこのシー氏が身をもって証明した「為せば成る」ということわざ。彼のさらなる繁栄を願わずにはいられません。
*なお、彼の自伝の書籍をamazonなどで探したのですが、「Articles on Filipino Businesspeople, Including: Dado Banatao, Tony Tan Caktiong, Henry Sy, Eduardo Cojuangco」という書籍しかありませんでした。自営業をやっているものとして彼の自伝には非常に興味があっただけに残念です。変わりにこちらのyoutube動画を見つけましたので、ごらんください。
ところで、2015年末にアジアでもっとも大きいモール、SMシーサイドがSRPというセブシティから少し南に下った場所にオープンしました。
ぜひこの、ヘンリー・シー氏が描いた新しい未来を見に行きましょう!